リボンと王子様
職場に復帰して半月が経った。
お手伝いさんをしていたことが随分前のことに思えた。
千歳さんに全てを知られてしまってから、初めて出勤した日。
私は公恵叔母さんの命で、業務研修に出ていたということになっていて、私が戻っても誰も何も言わなかった。
久しぶり、とか。
東京本社での研修はどうだった、とか。
ありきたりな挨拶をしてくれていた。
ただ、唯一事情を知っている松永室長と美冬さんだけは気遣わし気な表情を見せた。
そんな松永室長と美冬さんに私はニッコリ微笑んで、今日からまたよろしくお願いします、と頭を下げた。
二人はただ、お帰り、と言ってくれた。
秘書課のこの場に戻りたいと願っていても、もう居場所はなく、戻れないんじゃないかと心配していた私は少しホッとした。
コンコン。
社長室のドアを松永室長がノックする。
「どうぞ」
いつもと変わらない公恵叔母さんの声が扉の内側から聞こえた。
「……失礼します、社長。
葛城が出社しましたので」
「そう、よかったわ。
時間は大丈夫かしら?」
「はい、予定通りです」
それだけ言って、松永室長は社長室を辞した。
残された私は公恵叔母さんに促されるままにソファに腰をおろした。
お手伝いさんをしていたことが随分前のことに思えた。
千歳さんに全てを知られてしまってから、初めて出勤した日。
私は公恵叔母さんの命で、業務研修に出ていたということになっていて、私が戻っても誰も何も言わなかった。
久しぶり、とか。
東京本社での研修はどうだった、とか。
ありきたりな挨拶をしてくれていた。
ただ、唯一事情を知っている松永室長と美冬さんだけは気遣わし気な表情を見せた。
そんな松永室長と美冬さんに私はニッコリ微笑んで、今日からまたよろしくお願いします、と頭を下げた。
二人はただ、お帰り、と言ってくれた。
秘書課のこの場に戻りたいと願っていても、もう居場所はなく、戻れないんじゃないかと心配していた私は少しホッとした。
コンコン。
社長室のドアを松永室長がノックする。
「どうぞ」
いつもと変わらない公恵叔母さんの声が扉の内側から聞こえた。
「……失礼します、社長。
葛城が出社しましたので」
「そう、よかったわ。
時間は大丈夫かしら?」
「はい、予定通りです」
それだけ言って、松永室長は社長室を辞した。
残された私は公恵叔母さんに促されるままにソファに腰をおろした。