リボンと王子様
「長い話になってしまうのだけれど、ごめんなさいね。
有子さんと私が親友なのは知っているわよね?
私達はお互いの立場や責任もあるけれど、息抜きも兼ねてよく会っているの。

二人の時の私達は、親友として、お互いに年頃の二人の子ども達をもつ母として話をしているの。
……最近よく話していたのは、千歳くんと瑞希の話だったの。

二人とも橘株式会社で一生懸命業務に取り組んでいて……実家の会社のことも考えていてくれていてね。
私達はとても嬉しくて」


少し困ったような表情の公恵叔母さんを見つめながら、黙って話を聞く。


「ただ二人共、もういい大人になったでしょう?
それこそ周囲が騒がしくなってきたのよ。

決まった相手はいるのか、お見合いはしないのか、とか。私はね、経営者としては甘いと言われるかもしれないけれど……息子達には自分達が選んだ大切な人と幸せになってもらいたいの。

無理矢理相手を押し付けたり、決めたくもないの。
もう成人もして立派に社会人として独り立ちしている息子に恋愛面で口を挟むなんて無粋な真似はしたくないって思っていたのよ」


本当に辛いときに自分が心から愛し、信じている人が隣りにいてくれるだけで前を向けるから、と公恵叔母さんは少女の様に微笑んだ。

それは公恵叔母さん自身の経験からでもあるのだろう。

私は公恵叔母さんのそういった考え方がとても好きだ。
< 198 / 248 >

この作品をシェア

pagetop