リボンと王子様
「……以前に出会った女性に恋をして、必死でその女性を探しているんだって。
その人以外はいらないって言ったんですって」

「……!」


その言葉に私は瞠目した。


「有子さんも千歳くんのお父様、隼斗さんも驚いてね。
響家は当時、ちょっとした騒動だったらしいの。
その女性は名前も年齢も住所も何もわからなくて、唯一の手掛りが白いリボンだけだったそうよ。

千歳くんが使える伝手は使って探したけど見つからなかったって聞いて、響家が総力をあげて探し出そうとしたらしいの。
でもその人を追い込むような探し方はしたくないって千歳くんと捜索方法について意見が対立したらしいわ」


……白いリボン。


公恵おばさんが私の髪に結んでくれた白いリボン。

私が千歳さんの手首に結んだ白いリボン。

……千歳さんの部屋の透明なケースに入れられた白いリボン。


全てのリボンの姿を思い出す。


一つの白いリボンが色々な人を通じて、出会いと幸せを運んでくれた。

……なのに私はその幸せを踏みにじってしまった。

切れた白いリボンの絆はもう戻らない。


「今年に入って、有子さんと会った時にね、その話を聞いたの。
驚いたわ。
聞けば聞くほど心当たりがあったのよ、その女性に」


……私だ。


「……それからは穂花ちゃんが知っている通りよ。
有子さんと私は、どうにかして自然な形で二人を再会させたかったの。
四年は長いわ。
お互いに付き合っているわけでもないし、認識の違いや思い出としての捉え方もある。
……何より私は穂花ちゃんからその話を聞いたことがなかったもの」

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