リボンと王子様
公恵おばさんの言葉にグッと胸が詰まった。


「……ごめんなさい、黙っていて……」

「違うのよ、穂花ちゃん。
責めているわけではないの」


ポンポンと私を安心させるように、公恵叔母さんは私の手を軽く叩いた。


「……大事にしておきたい思い出だったのでしょう?」


そう。

言えなかった。

その出来事も。

その思い出も。

誰かに話したら消えてしまいそうで、夢になってしまいそうで。

大事すぎて。

……話せなかった。


「うん……」


頷いた私に公恵叔母さんは満足そうに微笑んだ。


「……穂花ちゃんの反応だけは気掛かりだったのだけど。さっきの私の予想通りじゃないかなと思ったの。
だから二人には内緒で、接点をもつ方法を考えたの。
千歳くんにバレたら余計なことをって叱られてしまうかもしれないし。
穂花ちゃんに気付かれたら断られてしまうかもしれないし。
私は、二人が少なからず想い合っているなら、幸せになってほしいと思ったの。
だから有子さんには全面的に協力をしたわ。
でも、私には片想いをこじらせている息子がいるから。
お節介だとは思っていたけれど、同じチャンスはあげたかったのよ」


そう言って公恵叔母さんは小さく笑った。
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