リボンと王子様
そう。

私は女性関係を調べるように言われていたのに。


調べてもいなかった。

それどころか千歳さんと付き合ってしまったのだから。


「有子おばさまの意見に逆らって千歳さんと付き合ってしまって、それを有子おばさまに黙っていたの。
……私、本当に酷いことばかりしていて……私が一番自分のことしか考えていないの……。
本当に……ズルい人間なの」

「……でも白いリボンが入っていた棚のことを有子さんに黙っていたのは千歳くんを守るためだったのでしょう?

……自分が仕える人の指示に反しても大事な人を守ろうとした、その姿勢は素晴らしいものよ。
穂花ちゃんは最低なんかじゃないわ。

……有子さんから聞いて私はとても嬉しかった。
有子さんも安心して千歳くんを任せられるってとても喜んでいたのよ」


その言葉に目を見張った。

公恵叔母さんの優しい声に涙が滲んだ。


「……千歳さんを傷付けてしまったの。
謝りたいの、きちんと謝ってもう一度だけ話したいの。
……好きなの……。
自分勝手だってわかってる。
でもやっぱりまだ諦められないの……」


声が震えた。

堪えきれずに嗚咽が零れた。


昨日も散々泣いたのに。


職場でしかも上司の前でみっともなく泣くなんて。

してはいけないことなのに。


涙が止まらなかった。


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