リボンと王子様
「……穂花ちゃん。
そんなに自分を責めないで。
元はと言えば私達が強引に蒔いた種なのよ。
本当にごめんなさいね。
有子さんも改めて謝罪をしたいって言っていたわ」

「……そんなこと……」

「……いいえ、私達に謝らせてちょうだい。
でないとこれから穂花ちゃんに顔向けできないわ」


そう言って公恵叔母さんは私をギュッと抱き締めた。


「……千歳くんには、今日私が穂花ちゃんに話した全てを有子さんが昨日話したと言っていたの。
……千歳くんとは連絡はとっていないのよね……？」

「日曜日に会ったきり会っていないの……」


千歳さんが私に向けた悲しそうな、やるせなさが浮かんだ漆黒の瞳が蘇る。

荒々しい悲しいキスも。



公恵叔母さんは何も言わなかった。

公恵叔母さんと私の間に沈黙がおちる。



私はソッと瞳を伏せて公恵叔母さんに話しかけた。


「……公恵叔母さん。
心配してくれてありがとう。
……私は大丈夫。
とりあえず、今日から職務に復帰します」

「……穂花ちゃん……」

「そんな顔をしないで、公恵叔母さん。
お手伝いさんも辞めちゃったし、せめて働かせて。
松永室長に指示をもらってきます！」


立ち上がり、歩き出した私の背中に公恵叔母さんの声がかかる。


「……わかったわ。
でも何かあったらすぐに言うのよ」


振り返って、笑顔で頷いた。

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