リボンと王子様
二人が顔を寄せて何かを話していた。

女性の顔がさらに赤く染まる。


その仲睦まじい様子に胸がキリキリと締め付けられた。

……呼吸が苦しい。


頭をガン、と殴られたような衝撃。

鼻の奥がツンとする。


最早、自分が何処に立っているのかわからなくなった。

足元の地面が抜けて、グラグラと崩れていきそうで。


腕にかけている、たいして重くもない紙袋が鉛のように思えた。

人形のように眼前の二人をボンヤリと見つめる。


ドンッ。


走っていた誰かの肩がぶつかって、身体が傾いだ。


「すみません、大丈夫ですか?」


スーツ姿の男性がよろけて転びかけた私に言った。


「……あ、大丈夫、です」


出した声は私のものとは思えないくらいに掠れていて。

情けないくらいに弱々しかった。


「本当に?
怪我をされてませんか?」


心配そうに手を差し伸べてくれる男性。

……恐らく若い人だろう。

顔をあげれず、緩慢に首を振る。


「大丈夫、です。
すみません、ぼうっとして、いたの……で」


紙袋は奇跡的にどこにもぶつけずに済んでいた。


「……穂花?」


その時。

一番聞きたくて聞きたくなかった声が降ってきた。

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