リボンと王子様
張り詰めた気持ちのまま、帰宅をした。

千歳さんの玄関ドアを見る勇気はもう残っておらず、瞳を伏せて足早に玄関ドアを開けた。


いつものように靴を脱いで鞄を置いて……そこまでが我慢の限界だった。

張り詰めた糸が切れたように、泣き崩れた。


私が想像するなかで、最悪の結末。

こんな可能性がないと思っていた訳じゃない。


ただ、考えたくなかった。

そんなことを予想したくなかった。


わかっていた。

自分がどれ程酷いことをしたのか。

嫌われて当然だと思っていた。


だけど。


目の前に突き付けられた現実は想像以上に残酷だった。

溢れだした涙が頬を濡らす。


どうして。



他に好きな人ができたなんて。

嫌われただけではなかったのか。

だから連絡がなかったの。

自業自得だってわかってる。

でも。

せめて、もう終わりだって言ってほしかった。

こんな終わりを望んでいたわけじゃなかった。


どうしてこんなことになってしまったのだろう。


ただ、好きなだけだった。

ただ、傍にいたかっただけだった。



ただ、それだけだったのに。


もう何もかもが間に合わない。



< 216 / 248 >

この作品をシェア

pagetop