リボンと王子様
泣き続けた私の鞄から、スマートフォンの着信音が何度も聞こえた。
見たくなかった。
顔を背ける私の意思に反するようにスマートフォンは鳴り続ける。
液晶ディスプレイを見なくても薄々わかった。
……千歳さんからだった。
あんなに声が聞きたくて。
話がしたくて。
電話をかけて。
電話を待っていたのに。
今こんな状態で。
電話に出ることなんて出来そうになかった。
何を話せばいいというの。
何を聞けばいいというの。
私にできることは、ただ耳と目を塞いでこの現実をやり過ごすことしかない。
バラバラに砕け散った心がせめて形を取り戻すまで。
泣きたかった。
涙と共に千歳さんの記憶を洗い流すように。
愛しい思い出に身体が切り刻まれる前に。
笑顔であの大きな瞳の彼女と幸せにとは今は言えそうにないから。
彼女はきっと嘘をつかない誠実な人なんだろう。
酷い裏切りをしない人なんだろう。
脳裏に焼き付いて離れない二人の姿。
肩を抱かれた彼女のはにかんだ恥ずかしそうな横顔。
幸せそうに寄り添う二人の姿に胸が締め付けられる。
……千歳さんが好きすぎて胸が痛い。
いつかこの想いを昇華させることができるのだろうか。
私の想いはもう邪魔なだけなのに。
スマートフォンはひっきりなしに千歳さんからの着信を告げる。
留守番電話が入っていた。
震える手で画面を操作すると。
『話がある。
今から家に行く』
と切羽詰まった千歳さんの短い声が聞こえて。
パニックになった。
彼はこの部屋の合鍵をもっている。
強引なことはしないかもしれないけれど、私が拒否をしても入ってこれるし、居留守も使えない。
見たくなかった。
顔を背ける私の意思に反するようにスマートフォンは鳴り続ける。
液晶ディスプレイを見なくても薄々わかった。
……千歳さんからだった。
あんなに声が聞きたくて。
話がしたくて。
電話をかけて。
電話を待っていたのに。
今こんな状態で。
電話に出ることなんて出来そうになかった。
何を話せばいいというの。
何を聞けばいいというの。
私にできることは、ただ耳と目を塞いでこの現実をやり過ごすことしかない。
バラバラに砕け散った心がせめて形を取り戻すまで。
泣きたかった。
涙と共に千歳さんの記憶を洗い流すように。
愛しい思い出に身体が切り刻まれる前に。
笑顔であの大きな瞳の彼女と幸せにとは今は言えそうにないから。
彼女はきっと嘘をつかない誠実な人なんだろう。
酷い裏切りをしない人なんだろう。
脳裏に焼き付いて離れない二人の姿。
肩を抱かれた彼女のはにかんだ恥ずかしそうな横顔。
幸せそうに寄り添う二人の姿に胸が締め付けられる。
……千歳さんが好きすぎて胸が痛い。
いつかこの想いを昇華させることができるのだろうか。
私の想いはもう邪魔なだけなのに。
スマートフォンはひっきりなしに千歳さんからの着信を告げる。
留守番電話が入っていた。
震える手で画面を操作すると。
『話がある。
今から家に行く』
と切羽詰まった千歳さんの短い声が聞こえて。
パニックになった。
彼はこの部屋の合鍵をもっている。
強引なことはしないかもしれないけれど、私が拒否をしても入ってこれるし、居留守も使えない。