リボンと王子様
「お姉ちゃん!
どうしたの?」


突然帰宅した私を舞花が慌てて出迎えた。


「その顔……何かあったの?」


心配そうに顔を曇らせる妹に私は力なく微笑んだ。


「パパとママは?」

「今日は残業で遅くなるって言っていたけど……」

「そっか……」


自室に向かった私の手をグッと掴んで。


「お姉ちゃん、何があったの?」


私の顔を覗き込む舞花の温かい瞳に。

涙腺がとうとう決壊した。



「……そっかぁ、見ちゃったんだ……。
それは逃げるわ、私でも逃げる」


舞花の部屋のベッドに二人で腰掛けながら全てを話した。

ひとしきり聞き終えた舞花は悲痛な表情を見せて、泣き出しそうな表情になった。


「……千歳さんからの話を聞く勇気はもうなくて……。
……嫌われちゃった、よ」


泣き笑いみたいに笑うと舞花は困ったように微笑んだ。


「……舞花、スマートフォン鳴ってない?」


私が鞄に入れっぱなしになっているものではなく、別のところから響いている。


「あ、本当だ。
ママかな?」


舞花がちょっと待ってて、と言ってスマートフォンを取りに行った。

リビングで舞花が話している声が途切れ途切れに聞こえた。


「は?
何言ってるの?
それはないでしょ。
今更……わかってる、わかってるよ。
でもそれだけはやめてあげて。
……お姉ちゃんをこれ以上傷つけたら許さないからね」
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