リボンと王子様
「あなたにも幸運がおとずれますように」
ひとり言のように呟いて彼の手首からそっと手を放す。
そっと顔を上にあげると、愕然とした表情の彼がいた。
泣き出しそうにもみえる漆黒の瞳に視線がぶつかった。
うっすらと頬が赤くなっているように見えるのは私の気のせい?
「……ありがとう」
彼は私の右手をとって、甲に唇を当てた。
彼の唇が当たった部分が焼けるように熱い。
思わず手を引き抜こうとすると、強い力で指を握られた。
「……君は誰?」
最初の質問を繰り返す彼。
吐息が私の指にかかる。
ゾクリと肌が粟立つ。
私の指ごしに見つめる濡れ羽色の瞳に抗えない強い光が宿る。
手を振りほどきたいのに振りほどけない。
初対面の何も知らない人なのに恐怖はなく、ただその瞳の強さに吸い込まれそうになる。
「……あの……」
カラカラに乾いた喉から無理矢理出した声は驚くほど掠れている。
私もあなたに尋ねたいのに。
あなたは誰?
どうしてそんな瞳で私を見るの?
どうしてそんな風に私に触れるの?
私を知っているの?
「わあっ、すごく綺麗!!」
突然聞こえてきた声に肩がビクッと跳ねた。
声の方に視線を向けると数人の女性が歩いてくる姿が見えた。
「ギリギリの時間だけど、まだ開いていて良かったね」
楽しそうに談笑する声が近付く。
ハッと我に返って。
一瞬、緩んだ彼の手から指を引き抜き、女性達のほうに向かって走り出した。
ひとり言のように呟いて彼の手首からそっと手を放す。
そっと顔を上にあげると、愕然とした表情の彼がいた。
泣き出しそうにもみえる漆黒の瞳に視線がぶつかった。
うっすらと頬が赤くなっているように見えるのは私の気のせい?
「……ありがとう」
彼は私の右手をとって、甲に唇を当てた。
彼の唇が当たった部分が焼けるように熱い。
思わず手を引き抜こうとすると、強い力で指を握られた。
「……君は誰?」
最初の質問を繰り返す彼。
吐息が私の指にかかる。
ゾクリと肌が粟立つ。
私の指ごしに見つめる濡れ羽色の瞳に抗えない強い光が宿る。
手を振りほどきたいのに振りほどけない。
初対面の何も知らない人なのに恐怖はなく、ただその瞳の強さに吸い込まれそうになる。
「……あの……」
カラカラに乾いた喉から無理矢理出した声は驚くほど掠れている。
私もあなたに尋ねたいのに。
あなたは誰?
どうしてそんな瞳で私を見るの?
どうしてそんな風に私に触れるの?
私を知っているの?
「わあっ、すごく綺麗!!」
突然聞こえてきた声に肩がビクッと跳ねた。
声の方に視線を向けると数人の女性が歩いてくる姿が見えた。
「ギリギリの時間だけど、まだ開いていて良かったね」
楽しそうに談笑する声が近付く。
ハッと我に返って。
一瞬、緩んだ彼の手から指を引き抜き、女性達のほうに向かって走り出した。