リボンと王子様
……私のこと?


怪訝に思いながらリビングに足を踏み入れると、珍しく不機嫌な様子の舞花がいた。


「舞花、電話……誰から?」


何となく予感がした。

ドサッとリビングの赤いソファに身体を預けて、舞花が答えた。


「蘭」

「蘭ちゃん……?
まさか……」


一瞬、吃驚の声をあげそうになった。


「そう。
千歳くんに頼まれたんだって。
お姉ちゃんが何処にいるか知らないか聞いてほしいって。
電話にもでないし、叔母さんのマンションにもいないようだし心配だからって。
千歳くんは梅田の地下街からマンションまでの道を往復してお姉ちゃんを探してるって」


声が震える。


「……何で」


手が震える。


「お姉ちゃんが実家にいるってわかったら、迎えに行くって言い出しかねないって蘭が言うから、それはやめてって伝えたの。
……今、会いたくないでしょ」


舞花の言葉に頷く。


一体どんな顔をして会えばいいのだろう。

今、聞き分けよく祝福なんてできないに決まっているのに。


どうして今になって私を探したりするのだろう。

あの彼女のために、きちんと別れたいのだろうか。

もう十分すぎるくらいにわかっているのに。

迷惑をかけるつもりなんてないのに。



無意識に両手の拳を握りしめた。


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