リボンと王子様
私の嘘を彼が知った日。

連絡がとれなかった。



あの日、千歳さんは今の私と同じような気持ちだったのかもしれない。

状況は彼のほうがとても辛く苦しかっただろうけれど。



あの時の私はただ、自分のことしかみえていなくて。

話をしたい、説明したい、謝罪をしたいと一方的な気持ちを押し付けようとしていた。



だけどそれは千歳さんにしてみたら傷口に塩を塗るようなものだっただろう。

相手を信じたくて、問い正したくて、真実を知りたくて。

でも真実を突きつけられることが恐くて辛くて。

自分がどうしたらいいのかわからなくて。

一人きりで異国に放り出されたような心細さと孤独感。

そこに彼は必死で立ち向かおうとしていてくれていたのに。



私は何もわかっていなかった。

今になって、気付くなんて。

私は何て自分勝手なんだろう。



せめて、今。

必死に私を探してくれている彼に。

無事だということ、もう私のことは大丈夫だということを千歳さんに伝えなければ。


「……ありがとう、舞花。
迷惑ばっかりかけてごめんね。
蘭ちゃんにも謝っておいてくれる?」

「それは構わないけど、お姉ちゃんはどうするつもり?」

「……とりあえず、実家にいるから大丈夫ってメッセージを送る、千歳さんに」


ほんの少しだけ晴れやかな顔をした私に。

舞花がボソリと呟いた。


「……お姉ちゃんってやっぱりお人好し、だよね……」
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