リボンと王子様
千歳さんにメッセージを送ろうと自室に引き上げて、スマートフォンを手にとった時。

美冬さんからの着信とメッセージに気付いた。


メッセージの内容は私の体調を心配してくれているものだった。

もう遅い時間だったので、心配してくれたことへの感謝と大丈夫だという旨のメッセージを送った。


千歳さんには。

実家にいるから大丈夫だということ、話を聞かなくてごめんなさいという謝罪だけを簡潔に送った。


ただそれだけなのに文章を作る指が震えた。

送信ボタンを押すことがなかなか出来なかった。


目を瞑って、深呼吸をして送信すると、すぐに返事が来た。


『よかった』


ただ一言だった。


その言葉は。


私が実家にいること?

居場所がわかったこと?

メッセージを送ったこと?



幾重にもとれる意味合いがわからなかった。



翌朝。

なかなか寝付けなかったけれど、早起きをした。


昨日と同じスーツのまま出社するわけにはいかない。


一旦マンションに寄って着替えなければ。

舞花に借りた部屋着を洗濯機に入れてスーツに着替えた。


リビングに入るとママと舞花が既に起きて朝食を食べていた。


「あら、おはよう。
やっぱり、早いわね」


のんびりとママが言った。

グレーのロングワンピースにエプロン、いつものママだ。


「穂花ちゃん、きっと早朝に戻るよってママと話してたの」


ベーコンをフォークでつつきながら話す舞花。


「ホラ、食欲はないかもしれないけれど、少しはお腹に入れてから帰りなさい」


コトリ。

私の前に美味しそうなベーコンエッグと食パンが置かれた。



< 222 / 248 >

この作品をシェア

pagetop