リボンと王子様
ママは何も聞かない。

舞花も何も話さない。


だけど、玄関まで見送ってくれた時。

ママが言った。


「……ママは何もしてあげられないけれど、穂花はママの大事な娘だから。
あなたはいつも一人で抱え込んだり頑張りすぎちゃうから。
もっと人に頼って甘えて相手を振り回しなさい、特に男子は」


そう言ってニコッと笑うママの笑顔は、隣に立つ舞花の笑顔によく似ていた。

その優しさに胸が詰まった。


「ママも私も基本的に穂花ちゃんが選んだ人は反対しないんだからね。
パパは拗ねそうだけど。
穂花ちゃんがしたいようにしてね」


それで、今、パパは寝てるのね……。


家族に温かく見送られて、マンションに帰った。

一日ぶりに帰ったマンションは当たり前だけど変わらない様子だった。


バタバタと急いでロビーを駆け抜けて、エレベーターに乗り込む。

真向かいの千歳さんの部屋をチラリと見て自室のドアを開けて着替えた。


いつもよりも急いで身支度を整えて、再びマンションを飛び出した。

会社まで急いで向かう。


何とか始業時間に間に合って、私物を片付けて。

美冬さんを探した。

美冬さんはいつもと変わらない時間に出社し、給湯室にいた。
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