リボンと王子様
ファッションビルの入口近くに見慣れた銀色の車を見つけた。

駆け寄る私に瑞希くんが車から降りてきた。



瑞希くんが眼鏡の奥の目を見開く。

四歳年上の常に冷静な従兄の目にもこの姿は見慣れないらしい。



正面に立った瑞希くんは私の全身をじっと見つめた。

縁なし眼鏡の奥に光る綺麗な瞳は公恵叔母さんによく似ている。

百八十センチメートル近い細身の長身に知的さが漂う上品な顔立ち。

真っ黒なサラサラの髪。

仕立ての良いダークグレーのスーツに濃紺のネクタイ。

隙のない完璧なまでの身のこなしは瑞希くんの几帳面な性格をよく表している。


「あの人素敵だね!」

「一緒にいる人は彼女かな?
すごく綺麗なドレスよね、何かパーティーかしら?」


周囲の囁き声を尻目に、瑞希くんは助手席のドアを開けてくれた。

「……ビックリした。
一瞬誰かわからなかったよ。
よく似合っている」

優しい微笑みを浮かべて、瑞希くんは車に乗り込む私に手を貸してくれた。

「……ありがとう、何だか別人になった気分なんだけどね」


複雑な表情を浮かべる私の頭をポンとひと撫でして、瑞希くんは運転席に戻った。

スムーズに走り出した車内で、瑞希くんが話し出した。


「穂花の写真が母さんから送られてきた時も驚いたけど、実物にも驚いたよ、いつもと全然違うな」

「……私も驚いたよ。
さすが叔母さんと瀬良さんだよね」

溜め息をひとつ落とすと。

「いや、そうじゃなくて。
穂花も大人の女性になったんだなってことだよ。
穂花は元々美人だし、母さんと瀬良さんは穂花の元々の魅力を引き出しただけだろ」

当たり前のように話す瑞希くんの言葉に真っ赤になる私。
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