リボンと王子様
「み、瑞希くん。
お世辞はいいから……」

恥ずかしくて俯く私に。

「本心だ。
きっと樹も同じように思ってるよ。
まあ、樹は舞花の着飾った姿を見たいだろうけど、な」

苦笑しながら瑞希くんがチラリと私を見た。



三歳年下の舞花と瑞希くんの弟の樹くんは同い年だ。

二人は市内の同じ高校に通っている。

秀才の呼び声高い瑞希くんの弟なだけあって、樹くんも特進クラスに籍を置く秀才だ。

舞花と樹くんは顔を合わせれば、悪態ばかりついているけれど、二人は何だかんだと仲が良い。



「わかる、それ。
樹くんも舞花もお互いのことを気にしているもんね、本人達は全否定するけど」

思い出してクスクス笑う私。

「……樹と舞花のことには気付くのに、自分のことには鈍いんだな、穂花」


小さく嘆息する瑞希くんに怪訝な表情を向けると、何でもない、と言われた。



「あっ、そうだ。
ごめんね、瑞希くん。
仕事中だったのに急に迎えに来てもらっちゃって……」

「ちょうど帰るところだったし、大丈夫。
穂花の綺麗なハレ姿も見れたし。
……数年後の穂花に出会った気がしたよ」

「え?」


真正面を見据えながら、ポンポンと手だけを私に伸ばして頭を優しく撫でてくれる。

兄や姉がいない私にとって、瑞希くんは本当に兄のような存在だ。

温かくて大きい瑞希くんの手はとても安心する。

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