リボンと王子様
「君は妖精?」



秀麗な顔立ちの彼が尋ねる。

闇色の双眸が真っ直ぐに私を見据える。



小さく首を横に振る私に。



一歩。

また一歩。

距離を近づけて来る。



「良かった」



フワリ、と零れた笑顔。

ドクン、と胸が震えた。



「君は誰?」



穏やかな光を綺麗な瞳にたたえて。

彼は私から視線を逸らさない。

眼前まで近付いた彼が私の右手を取った。

彼の左手に包まれて、ジワリと体温を感じる。

頬が一気に朱に染まる。



これだけ近くで見ても隙のない、華やかな容姿。

こんなにも綺麗な男性に初めて出会った。



どうして私に話しかけたの?

どうしてそんなことを聞くの?



聞きたいことがあるのに。

声が喉に張り付いてしまったように、言葉が出ない。

ただ彼を見つめ返すだけでいっぱいいっぱいだ。


「妖精じゃなくて、よかった。
君に会えて俺はラッキーだよ」


近寄りがたさを打ち消す、蕩けそうな微笑みで彼は私の右手に指を絡めた。
< 4 / 248 >

この作品をシェア

pagetop