リボンと王子様
「さあさあ、思い出話はこれくらいにして、お料理をいただきましょう」

その声が聞こえていたかのように障子が開き、料理が運ばれてきた。

「お薦めのコース料理なの。
公恵さんにも事前に伺ってはいたのだけれど、何か苦手な食べものや他に欲しいものがあったら言ってね?」



優しく気遣ってくださる有子おばさまに私は慌ててお礼を伝える。

「いえっ、とても美味しそうです!
ありがとうございます」



秘書の私がもてなしていただくなんて。

いくらプライベートとはいえ、申し訳ない。

恐縮する私の様子を見て公恵叔母さんが楽し気に話し出した。



「そういえば、最近千歳くんはどうしているの?」

その一言に。

待ってました、と言わんばかりに有子おばさまが口を開く。



「それがねぇ……もう千歳には頭が痛いわ」

「何かあったの?
確か千歳くん、ドイツにいるんじゃなかった?」

「ええ、でも来月から日本に戻るのよ」

「あら、じゃあそろそろ響株式会社に?」

「いいえ、まだ会社を辞める気はないみたいよ。
瑞希くんも今、ニューヨークよね?」



ご家族の話を私の前で話していていいのだろうか、と思うくらいに寛ぎ、明けっぴろげに二人は話している。

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