リボンと王子様
今朝は有難いことに、朝から晴れ間が広がっていた。

いつもは重くジメジメした空気もカラッとしていて気持ちの良い日だった。



いつものように出勤した私は嬉しくなって、朝一番にシーツを洗濯して、ベランダに干した。

たっぷりの日差しが真っ白なシーツに降り注ぐ。

千歳さんの部屋は日当たりが良く、周囲の建物が迫っていないため、開放感のある眺望が広がっている。



いつものように細々したものを片付けて、掃除機をかけおわり、寝室のシーツを交換し始める。

ふと何気無く窓を見ると。

ザアアッと激しい雨が降りだしていた。


「シーツが濡れちゃう!」


慌ててベランダに出ようと、リビングに続くドアを開けようとした、その時。

交換しかけのシーツに足を取られた。



「きゃっ……!」



勢い余って前方に身体が傾き、転倒しないよう咄嗟に伸ばした手が何かを掴む。

ガタンッ。

ガツンッ。

何かが落下した音と、私が前のめりに倒れかけ、ベッドの角に膝をぶつけた音が周囲に響いた。


「いったぁ……」


痛みに顔をしかめつつも、慌ててシーツを取り込みにベランダに急ぐ。

無事に濡れてしまう前にシーツを取り込み、ホッと一息ついて寝室に戻った。


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