リボンと王子様
瀬良さんは素晴らしい技術をもつ人で。

恐る恐る目を開くと。

鏡には知らない私がいた。



「まあ、やっぱり可愛い!
よく似合っているわ」

満足そうに頷く叔母さん。

「そうですね、前髪もちょうどよい色合いで良かったです」

ニッコリ微笑む瀬良さん。



「……これが私?」



今までにも何度か公恵叔母さんにはメイクをしてもらってきたけれど。

ウィッグを付けたりといった、本格的なものは初めてで。

単純に驚いてしまった。



私の瞳は母譲りの濃い灰色がかった色をしている。

遠い祖先に外国人の方がいたらしいのだけれど。

母方の家系では時折私のような濃い灰色の瞳の女性が産まれるらしい。



母と妹の舞花は青みがかかった黒い瞳をしている。

そして母も私も舞花も焦げ茶色の髪だ。

対する公恵叔母さんは黒い瞳に黒髪だ。



私のように瞳の色も髪の色も祖先の血を顕著に引き継ぐことは珍しいらしく。

この外見のおかげで、英語が話せると間違えられたことは何度かあるけれど、私は日本語しか話せない。

悪目立ちすることがあまり好きではないのと面倒臭さが伴って、普段から化粧をすることは殆どない。
< 9 / 248 >

この作品をシェア

pagetop