宮花物語
おそらく、姫だった白蓮や青蘭、家臣の娘だった紅梅でさえ、料理は下々の者が作ってくれるのだ。

黄杏は完全に、田舎の下級の家出身と言う事を、笑われているのだ。


それから、何を話したのかは、黄杏は覚えていなかった。

ただ、3人の他愛のない話に、相槌をうったり、うんうんと頷いたり、それだけだった。

そんな世間話から解放されたのは、夕方も過ぎてからだった。


自分の屋敷に戻ってきた黄杏は、夕食を出されても、箸が進まなかった。

「奥様、奥様!黄杏奥様!」

「えっ……」

ハッとして顔を上げると、目の前には信志と黒音が、心配そうに、自分を見ていた。

「す、すみません。」

「いや、いいんだ。」

隣同士で夕食を囲むのは、初めてだと言うのに、黄杏は心、ここにあらずだった。

「今日は、とても大変だったそうだね。」

「……お聞きになったのですか?」

本当は、聞いてほしくない内容だったのだが。
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