宮花物語
「ああ。白蓮に聞いたのだ。話の流れで、バカにしているように聞こえてしまったかもと、そなたの事を気に掛けていた。」

「奥様が……」

率先して笑っていたのは、正妻である白蓮だったような気がしたけれど、やはり夫の前では、優しい妻を演じているのかしらと、そっちの方が気になった。

「気にする事はない。私は黄杏の、素朴なところも、料理を作っているところも、好きなんだ。」

「信志様は、私が料理をしているところを、見た事があるのですか?」

「ああ、村の屋敷でね。宴に出す料理を、懸命に盛り付けていた。一度あの者達にも礼を言いたいと申したが、妃になれぬ者には近づくなと、忠仁に言われてしまった。」

黄杏の頭の中には、意地悪そうな忠仁の顔が、浮かんだ。

「……女が料理をするのって、そんなに可笑しい事ですか?」

「許せ。あの者達は、そういう育ちなのだ。」

お酒を飲みながら、自分の事も、他の妃の事も庇う信志。
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