宮花物語
夫であれば、自分を庇ってくれる。

だがこの方は、他の3人にとっても、夫なのだ。

二人で夕食が終わると、外に星を見に行った。


「どうだろう。そなたの田舎に比べれば、星の数も少ないだろうが。」

「いいえ。信志様と見上げる星は、どこにいても綺麗でございます。」

「そうか。それはよかった。」

そう言って空を見上げる信志は、村にいる時と同じ、優しい信志だ。

「黄杏。私には、そなた以外に、3人の妻がいる。」

「はい。」

もうその事は知っていると言うのに、何を話し始めるのだろう。

黄杏は、今だけはそんな話、聞きたくなかったと言うのに。

「一人一人、妻である意味が違うのだ。誰一人欠けても、今の私はいない。それだけは、分かってくれ。」

「……はい。」

そんな事、分かりたくもないと言えない辛さを、黄杏は噛み締めた。

「黄杏。」

名前を呼ばれ、黄杏の体は、温かい温もりに包まれた。
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