宮花物語
「言いたい事は、分かっている。一人の女に溺れて、己の成すことを忘れるなと言いたいのだろう?」

「いえ、私は……」

否定しようとする白蓮を、信志はそっと止めた。

「もう少しだけ、通わせてくれ。黄杏は……初めて心を通わせた相手なのだ。」

白蓮は、息が止まった気がした。


初めて、心を通わせた相手?

幼い頃に嫁いで以来、いつ何時でも、王の心を支えようと努力してきた自分と、心を通った時はなかったのか。

白蓮は、手をぎゅっと握りしめた。


「あの者と一緒にいると、心が安らぐ。王でもなく、ただ一人の男でいられるのだ。それに……」

信志は、白蓮を白い目で見つめた。

「もう白蓮は、私を男として、受け入れてはくれないのだろう?」

「えっ?」

「私とて、ただの男だ。自分の妃なのに、男として受け入れて貰えないなんて、自分は無能なのではないかと、思い悩む事もあるのだ。」

「あ、あの……」
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