宮花物語
白蓮は、自分が年を重ね、子供を他の妃に委ねなければならないと知った時、自分の中に眠る王への情愛に、蓋を閉めたのだ。

それが反って、王を苦しめる事になるなんて。


「だが、黄杏は違う。私の心も体も、いつでも受け入れてくれる。男としての、自信をくれるのだ。」

「そこまで……黄杏を……」

白蓮は椅子の上で、崩れ落ちた。

体は他の妃に譲っても、本当に心を通わせている相手は、自分だけだと思っていたのだ。

「そなたはきっと、情愛など陳腐な物だと、馬鹿にするだろうがな。」

「そんな事は!」

だが信志は、白蓮の本当の気持ちなど、知ろうともせず、夕食の途中で立ち上がった。

「王?」

「……黄杏の元へ行く。」

そう言ったきり、白蓮の屋敷を出て行った。


「うぅっっっ……」

自分への気持ちなど、もう無くなっているのだと分かった白蓮は、机の上で泣き崩れた。
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