宮花物語
白蓮の屋敷を出た信志は、真っ直ぐ黄杏の屋敷へ、足を運んだ。

「信志様……今日も、お出でくださったんですね。」

「ああ。」

屈託のない笑顔を見せる黄杏を、女人の前だと言うのに、抱き締める信志。

「今日は、夕食を残さず食べたか?」

「はい。」

「足りない物など、なかったか?」

そんな事を聞く信志に、黄杏はクスクスと笑う。

「ん?」

「いえ。まるで父上みたいに、心配なさるのですね。」

「父上みたいに……」

信志の胸が、少しだけチクっとする。

「すみません。嫌ですよね、父と一緒にされたら。」

黄杏は、信志の腕からスルリと抜けると、お酒の用意を始めた。

この1ヶ月の間、信志がひたすら通いつめた事で、黄杏も信志の行動が、手に取るように分かるのだ。


「すっかりそなたは、私の妃だな。」

「そうですか?これでも、まだまだ知らない事ばかりです。」
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