宮花物語
「通って下さる日が続いた時には、ご自分から他の妃の元へ通い下さいと、仰るのが妃の心得と言うものよ。」

「紅梅……さん……」

「私だって、3日続けて王が通って下さったら、他の妃の名前を出すわ。もちろん、黄杏さんの名前もね。」

黄杏の目に、涙が溜まりそうになっている。

紅梅の目は、勝ち誇ったかのように、強かに輝いていた。


「分かっているわよね。この宮殿では、王を独り占めできない事を。」

黄杏は紅梅の、優しさの中にある嫉妬を、見抜いていた。

王を自分に取られたと思い、奪い返そうとしているのだ。

そして、この瞬間。

紅梅も、王を慕っているのだと言う事を、改めて知る黄杏。


一人一人、妃の置かれている立場は、違うだろう。

だがここは、その一人一人違う4人の妃同士が、たった一人しかいない王の心を奪い合う、戦場なのだと黄杏は思い知らされた。
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