宮花物語
その寂しそうにしている原因が、ここにこうして寝ている事と、関係していると言うなら、白蓮はこのまま信志を、放っておくわけにはいかない。

「信志。」

名前を呼ぶと、信志の身体が、ピクッと動いた。

「今日は、私の屋敷に来なさいな。」

「その言い方、久しぶりに聞いた。」

「そうね。でも、あなたがまだ王の座に着くまでは、このような言い方だったわよ。」


幼い頃に出会ってから、信志は白蓮の唯一の友達だった。

夫婦となっても、ただずっと一緒にいる時間が、増えただけ。

そして、床を共にするようになっても、一番近くにいる、一番大切な人。

その事に、変わりはないのだ。


「さあ、行きましょう。」

白蓮は信志を抱き起こすと、静かに自分の屋敷へと、連れて行った。

「……もし、どのお妃のところへも行きたくない時は、私のところへ、来ていいのよ。」

「白蓮?」

「あなたが帰ってくる場所は、ここなのだから。」
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