宮花物語
信志の祖父も父王も、何人か妃がいたが、いづれも数人のお子がいた。

どの妃も、自分の子を持って、幸せそうに暮らしていた。

なのに信志は、未だに子がいない。

それは単に、自分に子ができない原因があるのではと、苦しんでいた。

それなのに、“やはり子が欲しい”など、甘えた事が言えるのだろうか。


「返事がないな。」

「……お許し下さい。」

すると突然信志は、白蓮を抱き上げた。

「お、王?」

「大人しくしていろ。」

3歳下の信志が、急に男らしく見えた。

白蓮の胸の鼓動が、早くなる。

ここ何年も、抱き締め合ったりすら、していないと言うのに。


そんな事を思っている間に、信志は白蓮の寝所に入り、寝床に彼女を下ろした。

「もう何年も、枕を交わしては、いなかったな。」

「いえ……私の事は、いいのです。」

「よくない。本来なら跡継ぎは、正后から生まれるものだろう。」

信志は、白蓮の肌に唇を這わせると、絹の服を少しずつ剥がしていく。
< 121 / 438 >

この作品をシェア

pagetop