宮花物語
撫でた頭の後ろには、白髪が1本混じっていた。


「白蓮……」

「ん……」

夫から久々に貰っている快楽に、白蓮の目はトロンとしている。

あの美しかった白蓮が、知らぬ間に、それを失っていた。

どうしてもっと、早くに気づいてやれなかったのだろう。

若さは、永遠ではないのに。


「……綺麗だ。」

少しくすんだ顔も、若い時と同じように、紅く染まる。

「本当に、心からそう思うよ。」

「信志……」

久しぶりに肌を合わせた夫婦は、昔を思い出しながら、今を楽しむ。

それは長い間、連れ添った者にしか持てない、甘美な香辛料のようだ。


情を交わした後、自分の胸の上で眠る白蓮は、嬉しそうに微笑んだ。

「女は可哀想だなとお思いでしょう?男は年をとっても、それが年輪になるけれど、女は年をとれば、萎れていく花のようで……」

「それでも……側で風に揺れていてくれる事に、変わりはないのだろう?」

それが白蓮なのだと、信志は知った。
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