宮花物語
さて、他の妃へと伝えた黄杏は、この宮殿に来て初めて、一人寝の寂しい夜を迎えた。

いつもは、一緒にお酒を飲む時間なのに、一人でお茶を飲み、冷たい寝具の上に、横たわった。

深夜になっても寝付けず、黄杏は何気なく外に出た。


月明かりが、綺麗な晩だった。

初めて信志と出会った時も、同じように月明かりが綺麗だったと思うと、寂しさは増した。

その時だった。

左側から、足音が聞こえた。

「あなたも、眠れないの?」

「青蘭さん……」

長い髪を結ぶ事なく、横に流している。

「今日は信寧王様、いらっしゃってないのね。」

黄杏は、なんとなく背中を向けた。

「気にする事はないわ。そんな夜もあるもの。」

だが青蘭は、そんな黄杏にでさえ気使う。


「青蘭さんは、一人寝など寂しくないのですか?」

少しキツメに言っても、眉一つ動かさない。

「王が、他のお妃の元へ行ったと聞くと、悲しくはならないのですか?」
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