宮花物語
「私の……子が……」

この国に来て、初めて希望が見えた瞬間だった。

「ですが……私のような落ちぶれた国の姫を、めとってくれる方など、いらっしゃるのでしょうか。」

しかも、卑しい身分の男との間に生まれた子供など、周りの近臣が、新しい王だと認めないだろう。

「信寧王。どなたか、伝はございませんか?新しい王の父に相応しい方の。」

すると信志は、優しく青蘭を抱き寄せた。

「いても、あなたには会わせない。」

「えっ?」

「私が、その相手になると、決めたから。」

青蘭は急いで、信志の元を離れようとした。

が、間に合わなかった。

青蘭の腕を強く握った信志は、青蘭が痛がっても、離そうとはしなかった。


「青蘭……」

握った腕の先にある細くて白い指に、信志は口づけをする。

「いやっ!」

逃げようとする青蘭を捕まえて、信志は草むらの上に、青蘭を押し倒した。

「止めてええ!お願いだから!止め……止めて……」
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