宮花物語
泣き叫ぶ青蘭の上に、覆い被さる信志。

だが、覆い被さったまま、相手は動かない。

青蘭はゆっくりと目を開け、信志を見た。

そこには、自分を愛しそうに見つめる、信志の姿があった。


「信寧王様?……」

「すまない。急に、こんな事をしてしまって……でも、もう我慢できない。君が欲しくて欲しくて、たまらないんだ……」

“君が欲しい”と言われ、顔が赤くなる青蘭。

自分を女として、見てくれている。

しかも、自分が嫌がるのを見て、それ以上襲うともしない。

一人の人間としても、敬ってくれているのだ。


「王……それならば、このような場所で、初めて結ばれるのは嫌でございます。」

ハッとした信志は、体を引き離すと、青蘭を立ち上がらせた。

「すまない……」

それだけを言うと、信志は背中を見せた。

「男としての配慮が、足りなかった。許してほしい。」

「はい……」
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