宮花物語
そして忠仁がよこした医師が、黄杏の部屋に来たのは、黒音が呼びに行ってから、3時間程経ってからだった。

診察は長引き、いつまで経っても、医師は黄杏の寝所から出てこない。

もしや、重い病気なのでは。

信志が、項垂れた直後だった。

医師が、ようやく黄杏の寝所から出てきた。


「どうなのだ?黄杏は。」

「お喜び下さい。第4妃は、ご懐妊の兆候が見受けられます。」

「……懐妊?」

「はい。ご出産の予定は、来年の春頃か、初夏のあたりかと。」

呆然としている信志を横に、屋敷の外で控えていた忠仁は、自分の孫ができたかのように、喜んでいる。


「おめでとうございます!信寧王!」

「忠仁。」

「いよいよ。いよいよ。お父上になられるのですね。」

「忠仁。忠仁!」

二人は、黄杏の部屋で、固く抱き締め合った。

「早速、皆にふれて参ります!」

「ああ!」

信志は、軽い足取りの忠仁を見送ると、黄杏の寝所に入った。
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