宮花物語
「よかった。よかった!」

両親が手を挙げて喜んでいると、弟がボソッと呟いた。

「これで……兄上も、村を出た甲斐が、ありましたね。」

静かに、両手を降ろす両親。

「……そうだな。」

「今頃、どこで何をしているのでしょう。」

ようやく実った宝の代償は、この家にとって、大きなものになってしまった。


そして、里の多宝村から、黄杏宛に荷物が届けられた。

「黄杏様。ご実家からお荷物が届きました。」

両手程の大きさの荷物。

そこには、手紙が挟まっていた。


【黄杏。
無事懐妊の程、おめでとう。
おまえは、腰がしっかりしているから、安産だとは思うが、念の為、妊婦が飲むといいと言われている薬草を一緒に届けます。
もう一人だけの体ではないのだから、これまで以上に、労るように。】


両親からの、気持ちが綴られている手紙を、黄杏は胸に抱き締めた。

「有り難う、父上、母上。薬草、大事に飲みます。」
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