宮花物語
黄杏の懐妊を知ってから、王はまた、毎日黄杏の元へ通うようになった。

「信志様。たまには、他の妃の元へ行かれては?」

「そんな意地の悪い事を言うな。そなたのお腹の中に、私の子がいると思うと、居ても立ってもおられぬのだ。」

「しかし、今の私には、夜のお相手ができませんから。」

「そのような事は、気にするな。」

信志は黄杏を、後ろから抱き締めた。

そんな信志を、余裕で受け止める黄杏。


ー 王は、性欲の強い方なのよ ー

ー あなたの元に通っている中でも、昼間、青蘭さんの元へ行っているのだから ー


紅梅から聞いた時はショックだったが、子ができてからは、それもまた可愛らしく思えてくる。

女はか弱いが、母は強い。


夜、寝台の上でも、信志は黄杏を抱き締めながら、寝ていた。

だんだん大きくなる、お腹に手を当てながら。

その姿に、どれだけお子を待ちわびていたのかが、伺い知れて、黄杏は無下に、その手を振り払えないでいた。
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