宮花物語
いよいよ、お腹も大きくなり、お腹を支えていなければ、歩けない程になっていた。

暖かい昼間の中、庭を歩いていると、いつものように紅梅が、武術の練習をしている。

「精が出るわね。」

振り向いた紅梅は、不機嫌そうな顔をしている。

「また、あなた?」

「仕方ないじゃい。私達の屋敷は、すぐ隣なんですもの。」


夜中、二人で泣きながら、抱き締め合った日から、黄杏は紅梅に、なんとなく親しみを感じていた。

「それにしても、大きくなったわね。」

「お陰様で。」

紅梅がお腹を触る。

「もう動くの?」

「うーん。あまり、動かないのよね。大人しい子なのかしら。もしそうだとしたら、姫君の方がいいわ。」

紅梅は、お腹の大きな女人が、『最近よく、お腹の中の子が動いて。』と言うのを聞いていた。

「ねえ、黄杏。最近、どう?体調は良くなった?」

「ええ。有り難う、心配してくれて。」
< 151 / 438 >

この作品をシェア

pagetop