宮花物語
すると黄杏は、馬の上での会話を思い出し、クスクスと笑い始めた。

「何よ。」

「いいえ。そう言えば王が、そのような事を仰っていたなと、思い出して。」

「はははっ!」

信寧王と黄杏の、笑っている姿を見て、一人取り残されたような気分の紅梅。

それを信寧王は、見逃さなかった。


「紅梅。今日も、稽古の練習に付き合ってくれるか?」

「あっ、はい。」

紅梅は直ぐに立ち上がったが、ちらっと黄杏を見た。

「お気になさらずに。私はここで、お二人の稽古を見ております。」

少しだけ微笑む紅梅。

「よし、行くぞ。紅梅。」

王が上着を脱ぎ、上半身裸になる。

「はい。」

紅梅は長刀を持ち、王は刀を持つ。


「はっ!」

「はぁあああ!」

稽古の相手と言うから、さも勇ましいやりあいになるのかと思えば、そうでもない。

王は王で、稽古と言いながら、紅梅に合わせて練習しているのだ。
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