宮花物語
黒音は、ニコッと笑うと、他の女人と一緒に、青蘭へのお菓子を選び始めた。

青蘭は、今だと思った。

そっと、黄杏に近づき、耳元で囁く。


「今の話、全てが嘘ではありませんよ。」

黄杏は、チラッと青蘭を見た。

「掃除人や洗濯人に、そう申しているそうよ。」

そう言って青蘭は、黄杏から離れた。

「さあ、青蘭様。こちらは、街から取り寄せた、美味なるお菓子でございます。」

「有り難う。」

青蘭はそ知らぬ顔で、そのお菓子を口の中に入れた。

「まあ、美味しいお菓子だこと。」

「有り難うございます。」

黒音は、満足げに頭を下げた。

そっと、目を合わせる黄杏と青蘭。


まさか、お腹の子を亡くしたのも、黒音のせい?

黄杏の言葉にならない質問に、軽く頷いた青蘭。

黄杏は、ため息をつくのも我慢し、じーっと黒音を見つめた。

心を許し合う女人が、子供を殺した犯人。

黄杏は、複雑な心でいっぱいだった。
< 173 / 438 >

この作品をシェア

pagetop