宮花物語
信志の表情は、ウキウキと輝いている。

「……まだ、でございます。」

「そうか。まだか……」

「恐らく、次の月のモノが来るまでは。」

がっかりしているが、黄杏に決して分からないように、抑えている。

信志の気持ちは分かるが、子を授かった事で、いろいろ見えた事もあった。

妃になったばかりの頃の、純粋な気持ちだけでは、いられない。


「信志様。そこでお願いが、ございます。」

「お願い?」

黄杏は、黒音がお茶を注ぐ時を、待っていた。

「次の月のモノが来るまでは、信志様の寝屋のお相手をする事はできません。その間この黒音を、お相手に推薦したいと思っています。」

「お妃様!」

黒音は、わざと驚く振りをする。

「黒音。あなたなら、できますね。」

黄杏に問われ、黒音はゴクリと息を飲んだ。

「はい。お妃様の代わりとならば、精一杯勤めさせて頂きます。」

黒音は喜びを隠しながら、頭を下げた。
< 175 / 438 >

この作品をシェア

pagetop