宮花物語
だが、信志の表情は、重かった。

「私に、そなた以外の女を、抱けと申すとのか。」

黄杏の胸が、痛む。

「たかが、1ヶ月程の間だろう。なぜ、そのような事を申すのだ。」

冷静に尋ねられると、余計に悲しくなる。

「もしかしたら私は、流産したせいで、もうお子が授からないかもしれません。」

「えっ……」

「そうなれば、他にお子ができる可能性のある女性を、新しいお妃にするしか、方法はございません。」

信志は、表情が固まっている。

「そなたを迎えて、まだ1年も経っていないと言うのに、他の妃を迎えろと言うのか。」

黄杏は、ボロボロと涙を流した。

「……全て、この国の未来の為でございます。」


本当は、他の女なんて、抱いてほしくない。

だが、子ができない自分を抱く事で、子ができる好機を逃してしまうのは、もっと嫌だ。

黄杏は苦難の末、黒音を推薦したのだ。

やみくもに言っている訳でもない。
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