宮花物語
だが子ができる可能性が、低いと分かった以上、他の女に、愛する人を譲らなくてはならない。

胸が張り裂けそうな思いと共に、白蓮も青蘭も、紅梅も。

同じ思いをしてきたかと思うと、黄杏は涙が止まらなかった。


一方で黒音は、黄杏から王の相手に推薦されてから、隙を見て、王に近づく毎日であった。

「信寧王様。」

稽古の途中でも、紅梅がいないとなれば、話しかけていた。

「ああ、確か……」

「黒音でございます。」

「そうだ。黄杏付きの女人であったな。」

そこまで覚えられ、黒音は少し嬉しくなった。


「そう言えば黄杏が、そなたを私の新しい妃にと、申していたな。」

「はい!」

まさかその話を、信寧王の方からされるとは。

黒音は、胸を踊らせた。

「そなたの気持ちは、どうなのだ。」

「はい。推薦して下さった黄杏様の為にも、お国の為、王の為に、この身を捧げます。」

黒音は、信寧王の前に膝を着いた。
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