宮花物語
まあ、いい。

話はトントンと進まない方が、成功する。

黒音は、黄杏の屋敷に戻った。


屋敷の中で黄杏は、女人に髪をとかしてもらっていた。

「黒音?」

少しの物事で、帰って来た事が分かるなんて。

ここに来たばかりの黄杏では、考えられない事だ。

それだけ、ここでの暮らしは、神経を研ぎ澄まさなければならない。

黄杏は日々、妃として生きていく、知恵を身に付けていったのだ。


「はい。ただ今、戻りました。」

黒音は、黄杏の前で頭を下げた。

「どうでした?信寧王は。」

黒音は、ちらっと黄杏を見た。

無表情で、こちらを見ている。

「……はい。とても、熱心に武芸の稽古をされておりました。ご自分のお役目を、真摯に受け止めていらっしゃる方なのだと、お見受けしました。」

「そう……」

見ると、黄杏も微笑んでいる。

私も知っているわという顔。

今の黒音には、鼻につく。
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