宮花物語
「それに、私の気持ちも尋ねられました。黄杏様に言われたので、仕方なく妃になるのかと。」

「まあ。それで?」

「……私の一存であると申しました。」

しばらく、辺りが静まり返る。


一介の女人のくせに。

妃の前で、よくそんな事が言えるとでも、言いたいのか。

黒音は、わざと下を向いたままだった。


「そう。それならいいわ。」

「えっ?」

驚いて顔を上げた黒音。

「私はね、黒音。ここに嫁いで来た時は、正直他の女に信寧王を奪われる事に、胸が引き裂かれそうな思いだった。」

「はい。それほど黄杏様は、信寧王様をお慕い申しあげておいででした。」

「でもね。もう子ができないのではないかと思った時、王の為にも他のお妃との間に、子を設けてほしいと思うのよ。」

「黄杏様……」

黒音の前には、一途に信寧王を思う、黄杏の姿があった。

「あなたは、信寧王の事を慕っているわ。どうせ奪われるのなら、そう言う人がいいの。」
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