宮花物語
黒音は、待っていたかのように答えた。

「どこかは分かりませんが、真っ直ぐ、お進みになっていらっしゃいました。」

黒音がそう答えると、黄杏は彼女の手を離し、屋敷を出て行った。

屋敷には、クスッと笑う黒音が残っていた。


屋敷を出て行った黄杏は、黒音が言った真っ直ぐに向かった場所を目指す。

と言っても、真っ直ぐ進む場所は、この広い庭の中にあって、一つしかない。

そう、白蓮の屋敷だ。


妃達は特別に、いつでも白蓮の屋敷の中に、入る事ができた。

黄杏も、何の疑いもなく、白蓮の屋敷の中に入った。


いくつかの部屋の中を見て廻って、黄杏は一つの部屋の前に辿り着いた。

「信志様……」

少し戸を開けた先に、白蓮の姿があった。

「白蓮様?」

もう少しだけ開けると、白蓮の膝の上に横たわる、信志の姿があった。


「なあ、白蓮。どうして妃達は、子を産む事しか、頭にないのだろう。」
< 183 / 438 >

この作品をシェア

pagetop