宮花物語
白蓮は、信志の体を撫でると、こう答えた。

「……それが、妃に与えられた役目なのです。解って下さい。」

「ああ、解っている。」

すると信志は、白蓮の方を向いた。

「では私は、ただ子を作るだけの、道具なのか。」

「いいえ。そんな事は、ございません。」

白蓮は、信志に顔を近づけた。

「青蘭も紅梅も、黄杏も。皆、王の輝かしい人生の為に、お子を作らねばと奮闘しているのです。」

「私の為に?」

「はい。決して、自分の欲の為ではありません、この国の為に、皆、働いているのです。」

信志は、尚も白蓮に近づく。

「では、私が子を望まぬと申したら?」

「王?」

「正直、疲れた。子を作る為に皆、動いている。そして、子ができぬ我に、皆呆れているのだ。」

「そんな事は、ございませぬ!」

白蓮は思い余って、信志を抱き寄せた。

それは母とも、姉ともとれた。

「白蓮……そなただけは、子ができなくても、離れては行かぬな。」
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