宮花物語
「白蓮……」

「あぁ……」

影に隠れていても、白蓮の甘い声が分かる。

「この白い肌……いつまでも、顔を埋めたくなるよ……」

「お好きな程……愛でてください……」

黄杏が張り付くように、部屋の中を覗くと、半分裸になっている白蓮の体に、信志が絡み付いている。

まるで、夫婦と言うより、母に甘えている子供のようだ。


黄杏は、白蓮の屋敷を出た。

黒音から、信志の心の中には、自分がいると知らされた。

嬉しかった。

他の女なんて、いらない。

お前だけだと、言われている気がした。

だから来たのに。

自分に気づいてくれて、抱き締めてくれると思っていたのに。


見せられたのは、本当の信志の姿。

人間誰しれも、強い部分を見せるのは、当たり前の事。

弱い部分を見せられる相手がいる。

それが、自分ではない女性だと知った時。

愛していれば、愛している程、虚無感は増すのだ。
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