宮花物語
「恐れながら黄杏様は、自分が愛した分だけ、信寧王様からも、愛してほしいのでは?」

黄杏は、動揺した。

胸の中が、モヤモヤする。

「相手に求めるだけでは、本当の愛とは、言えないのではないでしょうか。」

黒音の真っ直ぐな意見に、黄杏は体ごと反らした。

「……黒音は、大人なのね。」

「いいえ、口だけでございます。本当は、黄杏様が羨ましいのです。お慕いしている信寧王様と、相思相愛の仲なのですから。」

黄杏と黒音は、主従の仲だと言うのに、既に同じ妃同士のような、感覚でいた。


「黒音。あなたの事は、もう一度頼んでみますから。」

「でも、信寧王様が……」

黄杏は、また黒音の手を握った。

「白蓮様にも、後ろ楯になって頂くように、お願いしてみます。」

「黄杏様……」

黄杏は小さく頷くと、寝所へと消えて行った。


自分以外の女を、新しい妃に推薦するなど、お人好しのにも程がある。

後に残った黒音は、一人微笑んだ。
< 188 / 438 >

この作品をシェア

pagetop