宮花物語
第9話 相思相愛
数日して白蓮から信志へ、黒音をお妃にと、打診があった。

「どういう事だ。」

信志は、白蓮に詰め寄った。

「どうもこうもございません。備えあれば、憂いなしと申すでしょう。」

「黄杏を、捨てろと申すのか。」

「そんな事は、申し上げておりません。」

信志は、体を投げ出すように、椅子に座った。

「……今回の事は、黄杏の願いでもあるのですよ?」

「知っている。知っているから、断ったのだ。」

白蓮はため息をついた。


「黄杏の気持ちも、分かってあげてください。」

「なに?」

信志は、白蓮を睨んだ。

二人だけの時は、何度も何度も喧嘩し、睨み合う事もあったが、青蘭を妃に迎えてからは、初めてだった。

だが長い付き合いのせいか、白蓮は微塵も狼狽えない。

「都を知らず、田舎でひっそりと生きてきた女が、王の為に国の為にと、意を決して、魑魅魍魎が住む宮殿へ参ったのですよ?それなのに、子もできぬやもしれない体になってしまって。これが、どんなに辛い事か、王には分かりますか?」
< 189 / 438 >

この作品をシェア

pagetop